自己破産すると家族はどうなる?影響するもの・しないものと迷惑をかけない方法

自己破産すると家族はどうなる?

生活を立て直すために自己破産を検討したとき、家族へどんな影響があるのか不安になりますよね。別居している家族や生計を別にしている家族への影響はほとんどありませんが、同居家族へは負担をかけてしまうこともあります。今回は自己破産について、家族への影響と迷惑をかけない方法について解説します。

自己破産したら家族に影響があること

自己破産手続きをしたいけれど、家族には迷惑をかけたくないと思う方は多いでしょう。
自己破産することで家族に影響があるのは、主に次の6つのことです。

持ち家を失う

自己破産をすると、借金の返済義務を免除される代わりに一定以上の財産は没収されます。
家や土地などの不動産は原則、処分(任意売却または競売)しなければならないので、自己破産をすると持ち家を失うことになります。
同居している家族も住めなくなりますから、新居探しや引っ越し、場合によっては転職や転校など、さまざまな影響があります。

自動車の処分で生活に不便が生じる

自動車も基本的には処分の対象です。ローンが残っている場合は信販会社に引き揚げられてしまいますし、ローンがない場合も処分対象となります。
自動車を家族も使っていたり、家族の送迎などに使用している場合、影響は大きいでしょう。

価値が20万円以下の自動車なら残せる場合も

ただし自動車の価値が20万円以下の場合や、自動車が生活に必須である場合に裁判所に認められた場合は所有し続けられるケースもあります。

車の処分について詳しくは下記の記事で解説しています。

20万円以上の預金は処分の対象に

預金も処分の対象です。20万円を超える預金は目的が家族の生活費や教育費の支払いのためのものであっても、処分されてしまいます。
預金口座が複数ある場合は、合計で20万円を越える金額がすべて対象です。
預金が処分されることで、家族も今まで通りの生活が送れなくなってしまう可能性があります。

子供名義の預金は原則処分されない

自分の預金口座は処分の対象になるとして、それでは子供名義の預金口座ならどうでしょうか。

原則として、親の自己破産で子供の預金口座が処分されることはありません。
ただし、その場合は子供が自ら口座を管理していることが要件です。
日常のお小遣いやお年玉などを自分で貯めて、子供が自ら運用している預金口座なら、親の自己破産で処分されることはないでしょう。

親が実質的所有者の子供名義口座は処分されるおそれ

問題は、親が子供の名義を使って貯金をしている預金口座です。
この場合、口座の実質的所有者は親となるため、親が自己破産した際は破産者本人の口座とみなされ、処分される場合もあります。
また、自己破産申し立て直前での子供名義預金口座への資金移動は、財産隠しと取られる場合があり、免責不許可事由にカウントされる可能性もあります。

保険は解約される

貯蓄型の保険も処分の対象です。家族のために入った生命保険なども、解約返戻金が20万円を超えるものは解約しなければなりません。もしもの時の生活補償がされないなど、家族にも影響があるでしょう。

子供名義の学資保険も処分の対象に

生命保険だけでなく、子供名義の学資保険などの積立ても解約による返戻金が20万円を超える場合は処分の対象になります。
教育費を賄えなくなり、子供の進学先に影響がでる可能性もあります。

家族カードは使えなくなる

自己破産すると本人のカードはもちろん、家族カード(同居の家族などが使える契約者の口座から引き落ちされるカード)も使えなくなります。
家族カードで公共料金の支払いなどをしていた場合、支払い方法の変更手続きが必要になります。

家族が保証人の場合、返済義務が発生する

自己破産したからといって、代わりに家族の誰かが返済しなければならない、ということはありません。
しかし、家族が保証人になっている場合は別です。
自己破産すると破産した本人は返済義務が免除されますが、保証人には返済義務が残ってしまいます。

例えば住宅ローンなどが残っていた状態で家族が連帯保証人になっていた場合、自己破産をすると家族へ一括請求されてしまいます。
家族が支払えない場合、家族も一緒に自己破産や任意整理をせざるおえなくなる可能性があります。

自己破産しても家族に影響がないこと

自己破産はあくまで個人の手続きですから、家族に影響しないことも多くあります。
自己破産手続きをした場合に家族に影響がないことは主に次の7つです。

99万円以下の現金

先に解説したとおり、20万円以上の預貯金は処分の対象となりますが、99万円以下の現金は自由財産として残すことができます。
この99万円は破産者の生活費3ヶ月分程度を想定しており、破産法(34条3項1号)・民事執行法(第1条・第131条)をもとに法律で設定されている金額です。
預金ではなく現金として99万円を確保しておくことで、申し立て後、当面の家族の生活を維持することは可能です。

ただし、この現金99万円は必ず自動的に自由財産と認められるものではありません。
現金99万円以外にも他の財産がある場合などは、自由財産の拡張が認められるかどうかはケースバイケースで、裁判所が判断します。

家族名義の財産には影響なし

家族が所有している財産への影響はありません。
同居している家族のものでも、家族名義であれば家や車などを処分する必要はありません。

家族の職業選択・就職転職に制限はない

自己破産した本人は一定の間、資格や職業が制限されます。
しかし、家族は制限されませんので、家族の就職や転職、現在の職業に影響は及びません。

家の家具や家電は残せる

生活に必要な家具や家電などは、処分の対象となりません。冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの生活必需品が自己破産によって没収されることはありませんので、これらを使えなくなって家族が困ることはないでしょう。
ただし、生活に必ずしも必要ではない高級な家具(アンティークなど)は処分の対象となる可能性があります。

家族の結婚に法的な影響はない

家族が自己破産したことで、結婚に法的な制限はされません。戸籍や住民票に記載されることもありませんから、基本的には影響がないといってよいでしょう。
ただし、官報などの情報から相手方に知られるリスクはゼロではありません。

家族の信用情報に悪影響はない

自己破産した本人は一定の期間、信用情報に記録が残ることでクレジットカード作成やローン契約ができなくなります。
一方、家族の信用情報には何も記録されませんので、悪影響はありません。
ただし、審査で家族の信用情報が影響することはありますので、契約したいローンによっては家族の自己破産が原因で審査が通らない可能性もあります。

別居中の家族、親や兄弟には影響なし

一緒に住んでいない家族には、基本的に自己破産の影響は及びません。別居している両親や兄弟へ裁判所などから連絡がいくことはありませんし、当然財産や就職、結婚等に影響はありません。

家族にバレずに自己破産する方法はあるか

自己破産を検討しているけれど、家族には知られたくない場合もありますよね。ここでは家族にバレずに自己破産をできるのか、バレずに自己破産できるケースについてみていきます。

同居家族に内緒での自己破産は現実的にムリ

家族と同居している場合、内緒で自己破産するのは現実的ではないでしょう。
下記のようなことから、自己破産について家族に知られてしまいます。

  • 自宅に債権者や裁判所からの郵送物が届く
  • 破産手続きで配偶者の収入証明が必要
  • 持ち家や自動車の処分が発生する
  • クレジットカードが使えなくなる

郵便物などに気を付けて家族に知られないようにしていても、突然車を処分したりという生活状況の変化から現実的にはバレてしまうでしょう。

家族にバレずに自己破産できるケース

一方、生計を別にしていたり同居していない家族には自己破産したことをバレずに済む可能性があります。

別居している

家族と別居していて一人暮らしの場合などは、生活状況の変化を覚られにくく、郵便物などで知られてしまう可能性もないため、自己破産について秘密にできるかもしれません。

生計を別にしている

同居していても生計を別にしている場合は、自己破産について知られる可能性が低くなります。
ただし、家族の借りている家や、家族の持ち家に同居している場合は、家族の書いた同居証明書の提出を求められることがあります。
また、同居家族の収入証明などの提出は原則必要と考えておいたほうが良いでしょう。

自己破産で家族に迷惑をかけない方法は?

自己破産をしないと生活を立て直せないけれど、家族に迷惑はかけたくないと悩むのは当然です。
ここでは、家族に迷惑をかけずに自己破産する方法についてみていきます。

自己破産以外の債務整理方法を選択する

債務整理をする方法は、自己破産だけではありません。目的によって、個人再生や任意整理という方法を選択することで、家族への影響を最小限に抑えられる可能性があります。

個人再生で持ち家を残す

個人再生をすると全部ではないものの、返済義務が大幅に免除されます。
住宅ローンが残っていて返済中の場合は住宅ローン特例(住宅資金特別条項)を利用することで、家を手放さずに住宅ローン以外の債務を減額してもらうことが可能です。

引っ越しをしなくても済みますから、家族の生活環境などへの影響を少なくできます。

個人再生について詳しくは下記の記事で解説しています。

任意整理で特定の借金を選んで債務整理をする

任意整理は債権者と交渉し、借金の返済方法を長期間の分割にしたり、利息部分の免除を認めてもらう方法です。
返済義務は残りますが、任意整理交渉をする相手は選べます。
車を引き揚げられたくなければ車のローン会社とは任意整理交渉をせず、ほかの借金について任意整理すればよいのです。

また、家族が連帯保証人になっている借金についても任意整理交渉をしないことで、家族への影響を大幅に減らせます。

任意整理と自己破産の違いについては下記の記事で詳しく解説しています。

弁護士に相談する

自己破産で家族への影響を最小限に抑えたいならば、弁護士に相談することをおすすめします。家族との関係、財産の状況や債務の内容、返済可能かどうかなどを踏まえて何が適切な手段かを教えてもらえるでしょう。
また、できる限り家族へ知られたくない場合にとれる手段についても相談にのってもらえます。

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自己破産で家族の負担を小さくするには?

自己破産する際に、できる限り家族への負担を少なくするには、どうしたらよいでしょうか。ここでは自己破産で家族に負担をかけないために注意したいポイントについてみていきます。

財産隠しをしない

自己破産の手続きをする際には財産目録を提出します。このとき、財産は漏れなく申告しなければなりません。
自己破産で返済義務を免除されるには免責の許可が必要ですが、財産隠しは免責不許可事由となるからです。

自己破産手続き前に家や車の名義を家族へ変更するなどしてしまうと、財産を隠したとして免責が認められず、家族に余計な負担をかけてしまいますから、注意してください。

偏頗弁済(へんぱべんさい)をしない

免責不許可事由には、偏頗返済と呼ばれるものもあります。偏頗返済とは特定の債権者にだけ、返済をすることです。自己破産の手続きでは、処分された財産を債権者へ平等に配分するため、偏頗返済を禁止しています。

自己破産で家族や友人に迷惑をかけたくないからと、家族等への借金のみを返済すると偏頗返済にあたりますから、免責不許可事由となります。
返済自体がなかったものとして、家族や友人へ請求がいってしまう可能性もありますから、注意しましょう。

破産を理由とした離婚は避ける

自己破産をする前に離婚すると、離婚による財産分与が財産隠しとみなされてしまうリスクがあります。
迷惑をかけないようにと離婚をしたのに、結果として負担を強いることになってしまいますから注意が必要です。

財産分与が不当だとして、配偶者へ請求がいってしまう可能性もあります。

自己破産と家族への影響に関する質問

自己破産して家族が辛い思いをしないか、どれくらいの負担を強いることになるのか、不安ですよね。
ここでは、自己破産と家族への影響に関して、よくある質問をみていきます。

自己破産は家族や同居人の進学に影響する?

自己破産は家族や同居している方の進学には影響しません。ただし教育ローンが組めない等で進学先が制限されてしまう可能性はあります。

家族や同居人も破産手続に出席しなければならない?

破産手続きで裁判所へ出席する必要があるのは破産する本人のみです。家族などが手続きに出席する必要はありません。

破産手続では家族や同居人の財産も調査される?

自己破産をしても、原則的には家族や同居人の財産は調査されません。ただし財産隠しが疑われるケースなどでは家族の財産を調査される場合もあります。

家族名義の車について、破産する本人名義のものでないことを証明するために車検証の提出が必要になることもあります。

家の名義人が親や配偶者の場合、家は差し押さえになる?

家が差し押さえされるのは、家が破産者の名義になっている場合のみです。

家の名義がもともと親や配偶者などの家族の場合、その家にそのまま住めます。
同居中の親の実家や家族で住む家が処分対象になることもありません。

自己破産で親に迷惑はかかる?

一般的には、自己破産した場合、その親や兄弟など家族に法的な影響はほとんどありません。
ただし、以下のようなケースでは、親や兄弟など家族に不利益が生じる可能性があります。

  • 親が子供の借金の連帯保証人になっている場合
  • 破産者名義の家に親が同居している場合

自分の自己破産で親に迷惑がかかるかどうかは生活形態や借金の内容によりまちまちです。
場合によっては、借金問題の解決で親に迷惑をかけないために、自己破産以外の債務整理方法を検討することもできます。

自己破産は個人の手続きなので、制度上、親など家族に影響を与えることはありませんが、精神的なショックや生活の変化などは避けられないかもしれません。
そのため、実際に自己破産を進める場合は親に対しては時間をかけて正直に事情を説明することが重要です。

自己破産すると同居家族の収入に影響は出る?

自己破産は個人の手続きなので、同居家族の収入には直接的な影響はありません。

ただし、同居家族が自己破産者の保証人あるいは連帯保証人になっている場合は、債権者から破産者の代わりに支払いを求められる場合があります。

また、自己破産の申し立てでは、

  • 同居家族の収入を証明するもの(給与明細や源泉徴収票など)
  • 同居家族を含む家計の収支

の提出が求められます。
夫婦の場合、生計をひとつにしているとみなされることから、同居家族の収入状況も免責許可決定を出すかどうか一定程度の判断材料にはされるでしょう。
同居家族の収入が多い場合は、自己破産者の免責不許可や返済能力の判断に影響することもあります。

自己破産は個人の手続きですが、同居家族との関係やお金の流れも考慮されます。
そのため、自己破産をする前には、同居家族に事情を説明し、協力を得ることが重要です。

まとめ

自己破産は個人の手続きですが、家族にも一定の影響があります。
ただし、すべての面で影響があるわけではなく、弁護士に相談して対策をすることで家族の負担を最小限に抑えることができます。

債務整理には自己破産以外にも、個人再生や任意整理といった方法があります。
自己破産に詳しい弁護士なら、それぞれに合った債務整理方法をアドバイスできるでしょう。自己破産でお悩みの方は早めに弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします。

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